シリコンゴムの商品にはいくらぐらいかかる?みんな知りたいお金の話。

今回は皆様が非常に気になるシリコンゴム商品を製作するうえでのお金(コスト)の話をしてみたいと思います。

まずシリコンゴム商品を製作するにあたり費用がかかりますのは当たり前な事ですが、どのようにシリコンゴムの成型メーカーが費用を算出しているかを把握する事で、これから皆さんのシリコンゴム商品の開発、特に形状の検討や注文数量の検討に役にたちます。

ここを知らないで高いゴム製品を作ってしまったとならないように、是非、覚えておいてください。もちろん実際に製作する際にはいつでも丁寧に説明させて頂きますのでご安心ください。。

説明に際しては、よりわかりやすくするために、シリコンゴム商品の開発プロセス(手順)と合わせて説明させて頂きます。

その1 あふれるアイデアを創出しよう!

アイデアを練るのに費用はかかりません。

皆様のあふれるアイデアを頭のなかで十分に整理し整頓され、これぞという物を決めてください。もちろん、今後のプロセスにおいて我々のようなゴム成型業者に相談され、最初のアイデアをブラシュアップされていくと思いますが、先ずは皆様のあふれるアイデアを整理・整頓されてください。

稀に整理・整頓されてないままご相談に来られるお客様もおりますが、その状態ですと我々としても何をどうしたいのかを把握することが難しく、適切にアドバイスできない事が多いですのでよろしくお願いします。

また、この時点で可能であれば手作りにて試作品を製作する事をお勧めします。

もちろん、手作りで製作できない場合もあるかと思いますが、いまや100円ショップに行けば様々なシリコンゴムが販売されておりますので、適当なサイズや形をした商品を購入しカッターやハサミ、シリコン用接着剤、輪ゴム、ホッチキス、クリップなどを駆使し手作りされ実際に試してみると良いです。

我々のような業者も何をどうしたいのかが一目でわかりますし、開発者の商品をつくりたい熱意も伝わりますので対応もより真剣になってくれると思います。

その2 製造メーカーに相談しよう!

アイデアが練られましたらシリコンゴムの製造メーカーに相談することになります。

ここで「どんな物をつくりたいのか」「それはどのように使用されるものなのか」「どの程度の数をつくりたいのか」「どのくらいの価格で販売したいのか」など考えていることを全て製造メーカーの担当者に伝えてください。

前項同様に開発者がどの程度の熱意をもってシリコンゴムの商品を作りたいかを製造メーカーの担当者は必ず探ります。何となく相談に来られているなと判断したら、すぐに断られるもしくは法外なコストを言われてしまいます。

ここで製造メーカーの担当者がやる気になってくれれば、ようやく試作の話になりますが、まずは一呼吸して量産時の製造方法やコストを大まかでも構いませんので把握しておきます。

費用をかけて試作品を作ってはみたものの、いざ量産の話をしたときに全く話にならない費用がでてきてしまったら試作をした意味がなくなります。試作品はあくまで量産品を製作する過程ですので量産を見据えてしっかりと話しを詰めていきましょう。

その3 モノづくりの最初は図面から!

さて量産費用で折り合いが付きそうであれば、試作品の話に入ります。

まず最初に試作品を製作するにあたりシリコンゴム成型メーカーに限らず、物づくりの現場に必要になるのが図面です。

図面というのは商品の形を平面の紙に記載し寸法や色、材質、機能などを記載した商品の仕様書のようなものでありX軸とY軸の2次元で描かれたものです。このX軸Y軸にZ軸を足したものが3D_CADとか3次元データ、3次元モデルなんて呼ばれます。

最近では3D_CADが普及しておりますので、弊社でも最初は3D_CADでモデリングし、その後にモデリングデータをもとに図面化します

この図面や3Dデータが無いと製造現場では何をどのように製作したら良いかわかりません。また、出来上がった商品が伝えていた形状と違ったりしても、そもそも図面が無いのでクレームをつけるのも難しいです。

シリコンゴムの製造メーカーに明確に作りたいものを伝えるにも必要ですし、出来上がった商品を確認するのにも非常に図面は重要になります。この重要な役割を果たす図面ですが、図面を描くには専門知識が必要になってきます。図面の製作に携わっていれば簡単に描ける形状でも、携わっていない人には難しいです。

図面が描けない場合はシリコンゴムの製造メーカーに図面作成から委託することになりますが、全てのシリコンゴム製造メーカーが図面を作成できるとは限りません。なかには「図面が無いと製作できませんので、図面を用意してください。」と言われる事もあります。

自前で図面の用意が難しく、またシリコンゴムの製造メーカーにて対応してくれない場合はプロダクト設計事務所(データ屋さんとか図面屋さんと呼ばれる場合もあります)に依頼することになります。図面作成にも費用が掛かってしまうという事です。
※ゴム製造メーカーに依頼されても別途費用が掛かります。

図面作成費用は各会社様によってまちまちだと思いますが、数万円から複雑な形状や曲面(例えばリアルな人間の手など)は費用が数十万に跳ね上がる事もあります。
※複雑な形状や曲面は図面ではなく3次元データで作成し2次元図面に変換されます。

また、シリコン製造メーカーにて対応してくれず尚且つ費用も払いたくない!という場合は、少し時間をかけてでも自前で用意することをお勧めします。現在は無料のCADソフトも多数ありますので努力と根気があれば覚えられます。

自分で描けるようになるとその後に発生するであろう、形状の修正なども自分でできますので費用はゼロ円です!少しの努力で大幅な費用削減になります。

その3 試作品の製作にかかる費用!

さて図面が完成したらいよいよ試作品の製作に入ります。既に説明したようにシリコンゴムの製造方法には様々な工法があります。抜き加工や切削加工、注型成型に簡易型成型などなどです。

試作品を製作する目的に合わせて最適な工法を選択することが費用を安く抑えるポイントになります。各々の工法説明はすでに説明させて頂いてますので省略させて頂き、費用面の話をさせて頂きます。

なお、試作にかかる費用として記載してますが、イニシャルコストが変わるだけで量産品の製造の場合もおおむね以下の費用となりますので参考にしてください。

●プロッター加工

平面形状で形成され数も数個程度であればプロッター加工がコストを抑えて製作できます。プロッター加工はプログラミングで制御された刃物のついた機械で、ゴムシートを指定の形状にカットする機械です。

発生する費用はカット費用のみです。

カット費用の内訳は「材料費(ゴムシート費)」「プログラム費」「段取り費」「加工費」「梱包費」「送料」「管理費」「利益」となります。

通常は加工メーカーにてシリコンゴムシートの在庫を保有しておりますので、材料費は安価でおさまりますが、汎用で使用されるゴムシートではなく、特注のゴムシートを依頼する場合はゴムの原材料からゴムシートを製作することになり、費用が各段に上がってしまう場合もあります。

形状確認程度であれば特注のゴムシートを選定しなくても、加工メーカーに在庫であるゴムシートで十分でだと思いますのでお気を付けください。

プログラム費はプロッター加工機に形状を読み込ませ、カット条件を入力する作業になります。こちらは1個でも必要な作業になりますが、100個製作した場合も入力は1回ですので数多く製作すると必然的にコストは下がります。段取り費についても同様です。

加工費はもちろん実際にシリコンゴムのシートをカットする費用ですので、1個1個に発生します。これは数多く製作しても費用はカット毎にかかりますので、コストは安くなりません。

それらに梱包費、送料、管理費、利益と合わせて製品代が算出されます。項目をいっぱい並べてしまいましたので何だか非常に費用がかかると心配されるかもしれませんが、プロッター加工を依頼しても費用はあまりかかりません。もちろんメーカーによって費用の算出は色々とありますので、全てがとは言えませんのでご注意ください。

費用としては1個あたり数千円程度ではないでしょうか?大きさ形状もありますので参考程度にとどめてください。

●抜き加工

さて次は抜き加工です。完成する形状はプロッターの加工同様に平面形状となりますが、刃物で1個1個をカットするプロッターと違い、抜き型を用いて専用のプレス機でシリコンゴムを抜いていきます。

最初に抜き型費用が発生しますが加工そのものは早いので加工費が安く抑えられます。

ちょうど、お菓子のクッキーを抜き型を用いて抜いていくのと同じですね。例えばクマさん形状のクッキーをつくるときに、1個1個を刃物でカットするのは時間がかかりますが、抜き型を使えばドンドンできます。抜き型は必要になりますがドンドン抜けるので、作業は早いです。

かかる費用としては「抜き型費用」「材料費」「段取り費」「加工費」「梱包費」「送料」「管理費」「利益」となります。

抜き型じたいは抜き加工メーカーで製作するとこは少なく、抜き型製作メーカーに依頼します。費用イメージとしては数千円から数万円いったところです。

材料費や段取り費はプロッター加工と概ね同じですが、加工費はドンドン抜けますので安くなります。

こちらも数量によりますが1個あたりの製品代は数十円から数百円、数が少なく大変なものでも数千円程度になります。プロッター加工の場合と同じですが、それらに梱包費、送料、管理費、利益と合わせて製品代が算出されます。

●切削加工

切削加工はゴムの塊を旋盤やフライス盤、ウォータージェットなどを用いて削り出す工法で、平面だけではなく立体形状も加工することができる優れものです。

この工法では型は必要ありませんのでイニシャル費用が掛からずに安くシリコンゴム商品を製作することができます。かかる費用としては「材料費(ゴムシート費)」「プログラム費」「段取り費」「加工費」「梱包費」「送料」「管理費」「利益」となります。

これはプロッター加工と同じですね!

こちらも数量が多ければ費用は安くなりますが、概ね数千円からとなります。1個から注文できますので形状確認などにはお勧めの工法です。また特注材料に関してもプロッター加工と同様に対応は可能ですが費用が一気に高くなりますのでご注意ください。

●注型成型

シリコン型や樹脂型を用いて液状の材料を流し込み形を成型する方法で、数個であれば費用を安く作ることができ、また複雑な形状も成型できる工法です。

かかる費用としては「型費」「材料費(液状材料)」「段取り費」「加工費」「梱包費」「送料」「管理費」「利益」となります。

こちらも形状によりますが型費は1万程度から数十万までピンキリです。複雑な形状やサイズの大きな形状は型費が高くなります。

また型を製作したあとにメインの製品を製作しますが、液状の材料を流し込んでから硬化するまでに、およそ24時間程度の時間がかかりますので納期がかかるうえに製品費用は高くなります。

納期は型が1型の場合は1回製作するのに24時間ですので10回分の製作では硬化時間からみても10日以上はかかります。実際には材料の手配等や検査梱包、作業の空き具合もありますので20日間程度の日数をみておいたほうが良いでしょう。製品費用は数千円程度から数万程度になってきます。

●試作金型成型

金属を用いた型を作成しプレス成型にてシリコンゴムを製作する工法です。

かなり複雑な形状でも製作でき、材料も様々な材料を用いる事が可能で、量産した製品と同様の製品ができあがりますのでそのまま販売可能です。また、金属型を用いますので型の耐久性が高く1万個や2万個といった数でも製作可能な利点があります。

ただし、試作金型の場合は取数(面付数)が少なく製品費用は高くなります。

かかる費用としては「試作金型費」「材料費(ゴム原材料)」「段取り費」「成型費」「梱包費」「送料」「管理費」「利益」といったところです。

試作金型はゴム成型メーカーで製作することは少なく、大体はゴム金型メーカーに依頼することになります。したがって金型費用は金型仕入費となりここにゴム成型メーカーの利益が乗せられる事になります。

この金型費用は試作金型と言えどソコソコの費用がかかり10万円以下となる場合はほとんどありません。形状やサイズによりますが概ね10万から100万程度になります。

製品費用は数量や材質、形状によりますが数百円から数千円程度になります。もちろん他と同じく数を多く製作すれば費用は安くなります。

金型成形とコストの話

試作に限らず金型と製品の費用の算出には切っても切れない取数(面付け数)というものがあります。

ゴムを成型するには製品形状を転写した金型にシリコンゴムの材料を入れ、170度前後の熱を加えながら、大きな圧力を加えながら10分程度の時間をかけて成型します。

この成型の作業1回分をゴム成型メーカーでは1hotとか1プレスとか言いますが、1shotの作業は10分程度のゴム成型時間とゴム材料を型に入れる時間および成型後に製品を型から外す時間(脱型時間)の合計となり「1shot何分」などと言います。

この1shotの作業において金型に製品形状が1個彫られている場合は1shotで製品が1個だけできることになり、金型に10個彫られていれば1shotで製品が10個できる事になります。

1日8時間の作業で30shotのゴム成型をした場合、1個だけ彫られている金型を用いれば30個の製品ができあがり、10個の製品が彫られている金型では300個も製品が完成します。

1日の作業で30個の製品と300個の製品であればどちらが製品費用が安いかはすぐにわかると思います。

製品費用を下げるのであれば取数の多い金型が必要になりますが、製品を多く掘らなければならないので、金型費用は高額になります。金型費用を安く抑えたいのであれば金型に1個だけ彫ることで費用は安くなりますが、1日の生産量は少ないので製品費用は高くなります。

金型の取数と製品費用は密接に関係しておりますので、試作時は1個取型で製品代が高くても金型費用を抑え、量産時は製品費用を安くするために金型に費用をかけてでも取数を多くするのが一般的です。

●簡易型成形(TR工法)

TR工法はイニシャル費用を抑えつつ試作金型費用の良いところをもった弊社独自の工法です。

成型工程は試作金型の工程と同様に型に材料を挿入し熱と圧力を加えて成型しますので、量産品と同様の製品が完成します。

なおかつ型は金属ではなく樹脂や軽金属を用いますので試作金型で高額であったコストを各段に下げて製作することができます。

実際の費用としては「試作簡易型費」「材料費(ゴム原材料)」「段取り費」「成型費」「梱包費」「送料」「管理費」「利益」となります。

TR工法で使用する試作簡易型費は数万円程度が多く、複雑な形状や大きな形状でも十万円台で大体おさまります。

また製品費用は試作金型費用と同じように数百円から数千円程度に収まり、量産と同じ材料を使用できる事から量産品と同じ試作品を製作したい場合や試作品をそのままテスト販売したい、サンプルとして無償提供し市場の反応を確認したい等の際には最適な工法です。

ここまでゴム成型、加工方法について説明しましたが、弊社で対応できるのは抜き加工、試作金型成型、TR工法による試作簡易型成型となり、プロッター加工や切削加工は弊社では対応できません。これらは協力メーカーに依頼することになりますが、実際に切削メーカーと一言でいっても様々な特徴のある切削メーカーがあります。保有している材料や機械、技術などは業界にいる人たちにしかわからない事です。これらの加工についてもご相談頂けば、案件毎に適切な協力メーカーにて対応させて頂きますので、是非、ご遠慮なくご相談ください。