第4回 ゴム製品のコストと価格

弊社のホームページを見て相談してくるお客様において、質問内容で最初に多いのが「ざっくりとどの位かかるのでしょうか?」と言う質問です。ゴム成形品において、この質問は非常に答えづらいところがあります。というのも、ゴム成形品における価格の決め方は、金型や簡易型の取数によって大きく変動するからです。

ちなみに価格とは「販売する価格」を指し、コストは「原価」のことを指します。コストには製造に直接かかる製造コストと営業費や事務管理費などの間接コストがかかります。私たちメーカーはコストよりも低い金額で価格を設定することはあり得ません(あたりまえですが。。。)

かかるコストに一定の利益率を乗せゴム製品の価格を設定します。

このページでは、ゴム成形メーカーにおけるコスト内容と価格について、なるべく詳しく解説することでこれからゴム製品を利用する方たちへのお役に立てればと思います。
なお、間接コストの解説は「ゴム豆知識」とは関係ないものになりますので解説は省かせていただきます。

ゴム製品におけるコスト内容 イニシャルコストとランニングコスト

ゴム製品におけるコストの内容は大きく分けて次の2つになります。

1、イニシャルコスト
2、ランニングコスト

この2つのコストの分け方はゴム業界だけではなく、広く一般的に普及しているコストの考え方の一つですが、ゴム成形品のコストを捉えるときも重要な要素となりますので、大分類としてイニシャルコスト、ランニングコストの2つに分け解説させていただきます。

1、イニシャルコスト

イニシャルコストとは何かを始めるにあたり、最初にかかる費用のことであり、英語の「initial」の初期と「cost」の費用の言葉で初期費用とも言います。読んで字のごとく、初期の費用つまりは最初にかかる費用となりゴム成形におけるイニシャルコストは、

・金型費用もしくは簡易型費用
・製品データ作成費(不要な場合もある)
・各種冶具費(不要な場合もある)
・新規色配合設計費(不要な場合もある)
・特殊材料調達費(不要な場合もある)

などがある。これらのコストは製品によって一部要不要とありますが、初期費用として最初に発生する費用となります。なお、初期費用のため最初のみ発生し2回目の注文からは発生しないのが特徴です。ただし、保証生産数を過ぎて使用する金型費用や簡易型費用はメンテ費用や再作成費用が発生したり、特殊材料調達費用は材料を全て使用してしまった場合に追加で発生する場合もありますのでご注意ください。

2、ランニングコスト

マネジメント用語では「運転資金」として用いられますが、ゴム成形品におけるランニングコストは、ズバリ「製品製造費用」を指します。これは製品を製造するにあたり発生する費用のことであり、以下のような費用がかかります。

・段取費用
・材料費用
・材料練り費用
・成形(プレス)費用
・加工費用
・検査費用
・梱包/出荷費用
・運送費用

このランニングコストである製品費用はイニシャル費用と密接に関係している費用もありゴム成形品の価格を簡単に答えられない要因となっております。

それでは次項から各費用について詳しく解説していきましょう。

ゴム製品のイニシャルコスト

●金型費用/簡易型費用

ゴム製品におけるイニシャルコストのうち、もっともコストが高く、皆さまの関心が大きいのが金型費用や簡易型費用になると思います。ゴムのプレス成型品を製造するうえで必ず発生する費用でありながら、費用が高額になりがちなのが特徴であり、成形品を検討するうえでのネック要因ともなっております。

金型費用や簡易型費用の構成は「型設計費」「型材料費」「型加工費」に大きく分けられ、高額になる要因として、一番大きいコストが加工費になります。ゴムプレス成型品はゴム材料を金型に投入し、160度から180度の高温をかけながら、強い圧力を加えて成形していくため、高温域に耐えられ、なおかつ強い圧力にも変形しない材質で型を製作をつくる必要があり、一般的にS50Cやナック材などの金属系を用いられます。

これら金属系を製作したいゴム製品の形状に加工していくのですが、耐久性が良いということは単純に硬い材料ということになり、金型の加工には時間を要し、なおかつ高価なマシニングセンターと呼ばれる工作機械で加工が必要になるため、工作機械の原価償却費や加工時間費が高額になる要因となっております。

また、硬い材料を加工しますので専用工具(刃物など)も樹脂加工と比較して高額となり、摩耗も早いため、こちらも金型費用を高額にさせる要因となっております。

なお、金型費用と製品費用に関しては密接な関係があります。これは金型に何個彫るか、いわゆる「取数」との関係です。こちらは製品費用の項目で詳細を説明させていただきます。

●製品データ作成費用

簡単な形状のOリングやパッキン類などは必要ありませんが、3次元形状で表現される製品となると、製作するうえでCADが必要になってきます。お客様において準備し支給いただける場合は不要ですが、準備できない場合は弊社にて製作させていただきますが、こちらは単純に製作に要した人件費となります。

複雑な形状であれば高額になり、簡単な形状であれば費用は安くなります。

●各種冶具費

ゴム製品を製造するうえで安定した品質を保持したり、作業性を向上させる目的で様々な冶具が活用されます。主に、検査用冶具や仕上冶具、追加工冶具などがあります。

●新規色配合設計費

ゴム製品に色を付けたい場合などに、ゴム成形メーカーで保有している既存色を選定する場合には不要ですが、DICやPANTONEカラー等の色サンプルから新規に色を付ける場合には、色配合設計が必要となります。

これは、カラーサンプルをもとに各種顔料の配分を決定し配合したうえで、試作プレスし結果を評価する手順となり、NGの場合は再度配分を検討する作業に戻り、時間を要する作業となります。

もちろん、配合が決まれば次回以降は同じ配合を作るだけですので新たな配合設計費は不要になります。また、合成ゴムの色付けの場合は各種顔料ストックがありませんので、専門の練り工場へ依頼するか、顔料を新たに取り寄せることとなりコスト高になります。

●特殊材料調達費

ゴム製品を依頼するときに汎用材料でなく、特殊な物性を持った材料を選定された場合に発生する費用です。特殊用途の材料は特定製品にしか使用されないため、注文数量によっては最初に材料買取をお願いする際の費用です。なお、特殊材料でも継続して生産する場合などは特にイニシャル費用として請求しない場合もあります。

ゴム製品のランニングコスト 製品費用

製品費用は金型/簡易型費用と密接な関係があります。ここが、「だいたいいくら」と簡単に言いづらい所となります。ここでは、その関係をなるべく解りやすく解説していきます。

●成形(プレス)費用

成形費用は実際に金型や簡易型を用いてプレス成型する費用のことであり、プレス機械の原価償却費と作業者の人件費から構成される費用です。

プレス成型の1サイクル(1ショット)時間は材質や製品形状により異なりますが、加硫時間10分と脱型時間3分となり概ね13分程度です(弊社実績)。つまり、1型の生産時間が13分ということです。ここで間違わないで頂きたいのが、1型の生産時間であり製品1個の生産時間ではありません。したがって、13分で生産できる製品数量は1型にどれだけ製品が彫られているか、いわゆる「取数」に大きく起因します。

1型の1個しか彫られていない型で生産した場合は、13分で1個の製品が生産されることになり、1型に10個の製品を彫られていれば13分で10個の製品が生産されます。

では、1型に100個の場合は、、、

そうです、13分で100個の製品が生産されます。おなじ13分という作業時間のなかで1個取の型であれば1個しか作れず、100個取の型は100個も生産できることになります。1000個取であれば13分で1000個です!

成型費用は機械の減価償却費と作業者の人件費からとなると上述しましたが、仮に原価償却費と人件費の合計が13分あたり@1000円だったと仮定すると(計算を解りやすくするための仮単価ですよ!)、製品における成型費は1個取の型の場合は1個当たり1000円、10個取の場合は1個当たり100円、1000個取の場合は1個当たり1円となります(実際はここまで単純な計算ではありませんが)。

「それなら、金型にいっぱい製品を彫れば製品代が安くてお得だね!」とは残念ながらなりません。イニシャルコストで説明したように、金型を加工するのは非常に時間とコストがかかります。1個だけ彫るのであれば、1個だけの加工時間ですみますが、1000個も製品を彫るとなると加工も大変です。1個1時間の加工時間だと仮定すると、1000個は1個の1000倍もの加工時間がかかります。1000倍の加工時間が必要となると、もう説明しなくても大丈夫ですよね。高いです。

上記の表は金型取数と各ロット毎の費用の総額を表しております。すでにお解りと思いますが、1ロットしか生産しないのであれば、1個取型がお得となり、5ロット程度の生産を予定しているのであれば、10個取の型がお得となり、「イヤイヤ、もっとたくさん生産をお願いするよ!」となれば、1000個取の型が圧倒的に総額で安くなります。
※上記表は説明を解りやすくするために数字を単純化しております。実際にはここまで単純ではありません。

このように、金型や簡易型の価格と取数と製品単価は密接な関係があります。しかし、生涯ロット数とはお客様において総販売数と同じ意味になりますが、製品の企画段階で総販売数を製作に見積るのはほとんど不可能です。したがって、私たちはお客様からお聞きした予測される生産数量(ロット)や生涯生産数量(生涯ロット)などをヒアリングしながら、一番、安く済むと想定される金型取数を考慮して見積作業を進めていきます。

●段取費用

どんな業界でも同じだと思いますが、ゴムの成形も材料をもってきて型に入れて、ハイどうぞというワケではありません。注文をいただいてから、図面の確認、材料の確認、作業手順の確認、型の確認などなど、実際の作業に入る前に様々な確認作業が入ります。また、型を保管室から出してきて、プレス機にセット、使用する工具類の準備等も段取り作業として発生します。

これらの段取り作業は1個だけ生産するときも、10,000個生産するときも同じように発生する費用となるので、1個だけ生産すると割高になってしまいます。

雑談ですが、この業界に入った頃、協力工場の塗装メーカーのおばちゃんが口癖のように「段取り8分」と言っていたのを思い出しました。製造業において段取りは非常に重要な作業なんだと、おばちゃんから教わったのが懐かしいです。

●材料費用

ゴム材料の費用です。材料により価格はいろいろでkg単価数百円から十万を超える材料まであります。この材料費ですが、練り作業が入ると場合によっては無駄が発生することがあります。

ゴム材料はそのままでは成形できず、必ず加硫剤などの添加剤を投入し練りこみますが少量で材料を練るのが難しいという面を持っています。成形メーカーの持っている練機によりますが、1回の練り量は最低でも5kg程度は欲しいところです。

この加硫剤を添加して練り込んだ材料は、長期保管ができないため見積段階でロット数量が少なく材料を全て使い切らない場合は、1回の練り量を全てロット毎の製品単価に案分してしまいます。したがって、ロット数量が少ない場合は材料費も割高になってしまいます。

この加硫剤を添加して練り込んだ材料は、長期保管ができないため見積段階でロット数量が少なく材料を全て使い切らない場合は、1回の練り量を全てロット毎の製品単価に案分してしまいます。したがって、ロット数量が少ない場合は材料費も割高になってしまいます。

なお、弊社ではテスト用オープンロール機を保有しており、少量練りに対応可能です。このロール機であれば、100g程度から材料練りが可能であり小ロットや試作時においても、無駄な材料費をかけることなくゴム製品を製造することが出来ます。

●材料練り費用

上項の解説が材料そのものの費用でしたが、こちらは材料を練る作業の人件費と機械の減価償却費からなる費用です。一度に練る最大練り量は弊社では20kgになりますので、1ロットの材料使用量が20kg未満の場合は練り量は1回の作業費となります。反対に1ロットの使用量が1kg程度でも1回の練り作業は変わりませんので、ロット数量が少ないと割高になります。

この練り作業段階において、材料に着色なども一緒に行います。したがって、弊社ではゴムに着色した場合の費用は別段設けておりません。練り作業は顔料の有無に関わらず発生しますので。

●加工費用

ゴム製品を成形した後に様々な追加工をする場合があります。これらを加工費用として原価に計上いたします。具体的には、スリット加工や穴開け加工、他部品との接着や印刷、塗装、両面テープ貼りなどがあります。これら全ては1個あたりの作業費を計上していきます。

●検査費用

製造されたゴム製品は図面仕様に基づいて製作されているかを、人の目で確認する目視検査を実施します。切れや欠け、異物の有無など一つ一つを作業者が確認し、場合によっては各種測定器を用いて検査をする場合もあります。

これらの検査時間がコストになりますので、要求品質レベルに基づいて見積段階で算出し、原価に計上します。したがって、見積段階と異なる品質を要求される場合は再見積もりとなる場合があります。

●梱包/出荷費用

ゴム製品の梱包/出荷する作業費および梱包資材費となります。極端に小分けした梱包方法を指示される場合は別途見積書に梱包費用を別枠にて記載させていただきますが通常は製品費用に含まれます。

●運送費用

ゴム製品をお客様の手元にお届けする費用です。弊社では通常はヤマト運輸様に依頼してお送りさせていただきますので、当該費用は運送費用として計上されます。

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このようにゴム製品を製造するにも様々なコストがかかってきます。弊社では常に最適な価格を提案できるように、要求をしっかりと聞きながら、最適な製造方法を提案させていただきます。