第6回 シリコンーゴムに接着剤や両面テープを使えるようにする

今回は質問の多いシリコーンゴムの接着について解説いたします。

すでにご存知の方も多いと思いますが、シリコーンゴムには「難接着」という特性があります。この特性が利点なる場合もありますが、逆に難接着なので糊付けや接着、両面テープ貼り、印刷や塗装等を施工すると、「付かない」「剥がれる」「消える」「取れる」など問題になることも多いです。

私たちのような専門業者であれば、専用のシリコーン用両面テープや接着剤、印刷塗料等の材料ノウハウもありますので、問題ありませんが、これらシリコーン用の各種材料は種類も少なく、市販されていないケースもあり、また非常に高額だったりします。

ここでは、このような難接着のシリコーンゴムを簡単に接着できる方法について
●市販されているシリコーンゴム用接着剤で接着
●専用の表面改質処理システムを利用した接着
●バナーを利用した表面改質にて接着
の3つをご紹介いたします。

市販されているシリコーンゴムに使える接着剤

シリコーンゴムの接着だけを考えると、一番手軽にすぐできるのが、市販されているシリコーンゴム用接着剤を利用することです。最近では複数社からシリコーンゴム用の接着剤が販売されており、ホームセンターなどで売られてますので、入手しやすく簡単に接着することが出来ます。

市販されているシリコーンゴム用接着剤の各接着試験強度テストは「TPMゴム試験室/シリコンゴム接着剤試験」にて、公開しておりますので参考にしてください。

弊社での試験結果ではセメダインPPXがシリコーンゴム接着では一番の接着強度を示しましたが、1つの試験の結果のみなので、参考にしつつ使用する場合は、ご自身での評価したうえで判断をお願いします。。

シリコンの表面を改質する

上項は市販されているシリコーンゴム用接着剤を使用する例でしたが、ここからはシリコーンゴム用ではなく、汎用の接着剤や両面テープをシリコーンゴムに付けてしまう方法です。

表面改質とは、シリコーンゴムの表面を改質処理することで、超浸水性効果による濡れ性を向上させ密着性や接着性を向上させ、シリコーンゴム用ではない接着剤や両面テープが使えるようにする方法です。

表面改質していない状態のシリコーンゴムシートに水を垂らすと、難接着性のシリコーンゴムは撥水効果により、水は玉状になります。

この状態で接着剤を塗布しても簡単に取れてしまいます。
そこで、右側半分の水滴をふき取り、表面改質してみます。使用する設備はソフト99の「フレイムボンド」です。

ガスバーナーのような感じで炎がでますので、炎の最先端をゴムに触れるようにしながら、サッと舐める感じで処理完了です。処理は右側半分だけとし、左側は水滴をたらしたまま何もしません。終わったら、さっそく水滴を垂らしてみます!

どうでしょう!どうでしょう!
ひと目で濡れ性が向上しているのがわかります。もはや、シリコーンゴムの撥水効果は微塵もありません。確実に濡れている状態です。

この状態になると汎用の安価な接着剤や両面テープも付くようになります。また、ボールペンや油性マジックで書いても簡単には落ちません(ゴシゴシやれば落ちますよ)。

接着剤や両面テープは画像で伝わりづらいので、油性マジックで効果のほどを試してみたいと思います。左側、表面改質していない箇所と右側表面改質している箇所の両方に、グルグルっとマジックで書いてみます。

表面改質していな箇所は指で擦ると簡単に落ちますが、表面改質した箇所は指でゴシゴシ擦っても落ちません。これが表面改質の力です。

弊社ではこの表面改質の原理を利用して、シリコーンゴムに汎用の両面テープを貼ったり、汎用シールで使用されるノリをシリコーンゴム成形品に塗布した粘着剤付きシリコーンゴムを提供しております。

なお、表面改質処理には方法により種類があり、イトロ処理やコロナ放電処理などあります。会社によって対応する処理方法は変わりますが、表面改質処理効果は同等レベルになります。

ガスバーナーを利用した表面改質

表面改質処理は、設備が高額であり気軽に購入できるものでもありません。そこで、効果のほどは専用機器と比較すると落ちますが、簡単に表面処理できる方法もありますのでご紹介いたします。

準備するのはホームセンター等で売られている、携帯型ガスバーナーとガスボンベです。

この写真の道具を使って表面改質してみたいと思います。前回同様にシリコーンゴムシートに水滴を垂らします。何もしていないので、水は綺麗にはじかれ表面に水玉状になっているのがわかります。

やはり前回同様に右側部だけ水玉をふき取り、ガスバーナーで炙ります。この時に注意してほしいのは、炎の先端をゴム表面に当てることです。根本や中間あたりで炙っても全く効果がありません。必ず炎の先端をゴム表面に当てるようにしてください。

炙った後は右側に再度、水を垂らします。
どうでしょう・・・

右側部の濡れ性が向上しているのが良くわかります。垂らした水は水玉状にならず、シリコーンゴム表面に広がっているのがわかります。この状態になると接着剤や両面テープが付くようになります。

それでは、このガスバーナーで本当に接着できるのか試してみます。シリコーンゴムを短冊状にカットして、両端をガスバーナーで表面改質します。改質したら、すぐに市販の瞬間接着を塗布し接着面を合わせて、1分待ちます。いかがでしょうか!!!

しっかりと接着できました。接着剤はシリコーンゴムには付かないはずの標準的な接着剤で100円ショップで購入したものです。これでもしっかりと接着できているのがわかります。なお、表面改質処理したシリコーン表面は時間の経過とともに、元の難接着に戻っていきますので、接着する際は表面改質後にすぐに作業を行ってください。