第5回 ゴム成型における金型構造

ゴム成形品を製造するうえで必要不可欠なのが金型です。金型が無ければゴム成形品は製造できません。また、この金型の精度によってゴム成形品質が8割は決まってしまいます。この重要な金型ですが、お客様の設計担当者様より構造についての相談が増えてきております。

そこで今回の「ゴム豆知識」では、ゴム型構造について解説させていただきます。もちろん、ゴム型構造はノウハウ部分も多く、全てを公開できませんが、弊社で製作する型の一般的な構造の範囲で可能な限り説明させていただきますので、今後のゴム製品の設計にお役立てください。

なお、ゴム成形型の構造全てをここで紹介するのはノウハウやボリュームなどにより不可能です。あくまでも一般的な広く普及している範囲にての説明に留めさせていただきますのでご了承ください。

また、個別案件の具体的な金型構造に関しては回答できる範囲と非公開の範囲があります。こちらも弊社のみならずゴム成形メーカーが日々の努力で培ったノウハウの部分となりますので、ご配慮いただければ幸いです。

ゴムプレス成型とは

ゴムプレス成型の説明の前に私達ゴム成型メーカーで取り扱うゴムについて簡単に説明させて頂きます。ゴム(RUBBER)と呼ばれる素材には、熱可塑性樹脂のゴムと熱硬化性樹脂のゴムの2種類があります。

熱可塑性樹脂は広くはプラスチックの総称で知られているアクリルやポリカーボネイト、ポリプロピレンなどがありますがゴム素材とは異なり硬い材料となります。この熱可塑性樹脂の中で弾性特性を備えた樹脂を熱可塑性エラストマーと呼ばれ、ウレタン系やスチレン系等のエラストマーがあります。

この熱可塑性エラストマーも「ゴム」と呼ばれますが、私たちのようなゴム成形メーカーで扱う熱硬化性ゴムとは成形方法が異なります。これらは熱可塑の樹脂ですのでプラスチックの成形と同じようにインジェクション成形(射出成型)と呼ばれる方法で成形します。したがって、これから説明しますゴム型において、熱可塑性エラストマーの成形型は含まれませんのでご注意ください。

熱可塑性樹脂

熱を加えることで可塑化された樹脂をインジェクション成形機を用いて、金型内部に射出することで成形する、一般的にインジェクション成形と呼ばれる工法で、金型はインジェクション成形用に設計された型を用いる。

私達ゴム成型メーカーが扱うゴム(樹脂)は熱硬化性樹脂の分類となります。

熱可塑性樹脂は熱を加えると可塑化する樹脂であるのと反対に、熱硬化性樹脂は熱を加えると硬化する樹脂の事を言います。ゴム業界に関わる方達は硬化を架橋とか加硫などの言葉で表しますが、ここでは架橋や加硫の説明は省かせて頂きます。単純にゴムは熱を加えると硬化するという形で認識して頂ければ大丈夫です。

この熱硬化性樹脂であるゴムの成形はインジェクション成形(射出成型)では不可能で、コンプレッション成形(圧縮成形)と呼ばれる方法で成形していきます(一部のゴム材料はインジェクション成形で成形する場合もあります)。このページで解説していくゴム成形型は、このコンプレッション成形で用いる型について説明いきます。

なお、ゴム型にはコンプレッション成形のほかにトランスファー成形やトランスファー成形のようなコンプレッション成形の方法もあります。ここでは、コンプレッション成形について金型構造を詳しく解説するとともに、トランスファー成形の方法も紹介いたします。

コンプレッション成形方法と課題

コンプレッション成形は圧縮成形とも呼ばれ、ゴム材料を金型に投入し、コンプレッション成形機を用いて熱と圧力を加えて成形する方法です。簡単に言えば「たい焼き」のように成形していきます。「たい焼き」は水で溶かした小麦粉をたい焼きの形に形成された鉄版に投入し上下で閉めて、直火で焼いていきます。

たい焼きは水で溶かした小麦粉なので液状ですが、一般的に広く利用されるゴム材料は硬い粘土のような状態です。これをミラブル材と呼びます。ミラブル材のほかに液状の材料もわずかにありますが、ほとんどのゴム成形品はミラブル材を用いられます。

成型イメージ

たい焼きはサラサラした液状の小麦粉を型に流し込みますが、ゴム成形で用いられるミラブル材は先に記載したように、硬い粘土状態ですので、圧縮して成形するにもかなりの圧力が必要になります。もちろん、圧力に熱も加えられますので、金型は圧力と熱に耐えられる材質と構造が求められます。もし、仮にたい焼き用の鉄板をコンプレッション成形機に乗せてプレスしたら、きっと完全につぶれ平たい板になってしまうと思います(試したことがないので「たぶんですけど」)。

コンプレッション成形の方法

硬いゴム材料を熱と圧力を加えて成形する工法
●熱・・・150度~180度(低温成形可能な材料もあります)
●圧力・・・プレス機能力と型サイズによる。
●プレス機能力・・・50t~(中小のゴム成形メーカーでは100t~150tあたりが主流)

コンプレッション成形が熱と圧力をかけて成形することは解って頂いたと思いますが、この熱と圧力に耐えられる型の材質として用いられるのが、金属のなかの鉄になります。そして鉄でも色々な種類がありますが、炭素鋼と呼ばれる素材に分類される「S50C」が多く利用されております。なお、申し訳ないですが鉄材については詳しくないので、ここでは説明を省かせてもらいます(熱伝導性も重要です)。

また、S50Cのほかにステンレス系を用いて型を製作することもあるようですが弊社では経験がありませんので、こちらも説明は省かせてください。

弊社では耐久性が劣りますが鉄ではない樹脂や軽金属を用いたゴム成形工法「TR工法」で成形することも可能です。

コンプレッション成形で利用される型の材質

成形時に型に加えられる熱と圧力に負けない耐久性が求められる。

●型材質・・・S50Cが主流

さて、これで材質がきまりましたので、さっそく成形したい形状を型に彫ってゴムを成形したらどうなるでしょうか?

きっと、成形されたゴムには品質において問題が発生するはずです。想定される問題を列挙してみます。
●ゴム製品のバリが除去できない。
●ゴム製品の寸法が安定しない。
●ゴム製品の上型部と下型部の位置がずれている。

これらの問題を解決するために、ゴム成形型ならではの型構造が必要になってきます。ここからは、上記問題を解決するためのゴム型構造について説明します。

ゴム製品のバリを除去する喰い切り構造

ゴム製品のバリを除去するためにゴム型には「喰い切り」と呼ばれるゴム型ならではの構造を用います。熱可塑性樹脂を成形するインジェクション成形では成形品にバリが出ないように金型を製作しますが、熱硬化性樹脂であるゴム成形(コンプレッション成形)においては、その成形工法上、どうしてもバリが発生してしまいます。

したがって、このバリをいかに綺麗に除去できるかが、ゴム製品品質の重要な要素の一つとなっており、綺麗に除去するための構造が喰い切り構造となるのです。

この喰い切り構造には大きく2つの種類があります。一つは「V字喰い切り」と呼ばれる構造で、もう一つが「ブロック喰い切り」と呼ばれる構造です。

<V字喰い切り>


まずは下図を参照ください。上型と下型の合わせ部、ちょうどバリと製品の境目にV字型の溝を上下型両方に彫る構造を「V字喰い切り」と呼びます。V字喰い切り部にもしっかりとゴム材料を充填することで、ゴムと喰い切り部が綺麗に除去できるゴム型構造です。

喰い切り部は目視レベルでは鋭角なエッジに見えますが、実際はフラット部を設けます。完全なるエッジは刃物状態と同じになり、喰い切り部の耐久性が著しく低下します。そこで、あえてフラット部を設けることで耐久性を保持します。このフラット部の寸法によりバリ幅が規定されてきます。

このフラット部を仮に0.05mm幅に設定したとすると、理論上はゴム製品のバリ幅は0.05mm内に収まる設計となります。幅を縮めればゴム製品のバリは小さくなり、広げるとゴム製品のバリは大きくなります。ただし、実際にはこの数値よりバリ幅は大きくなることが多いです。これは、ゴムが弾性体であるため必ず綺麗に切れずに引きちぎられる為に起こると考えられてます。

ゴム硬度の低いゴム(柔らかいゴム)ほどバリ幅は大きく、硬度の高いゴム(硬いゴム)ほど、バリ幅は小さくでる傾向があります。また、ゴムの材質もバリ幅に影響します。シリコーンゴムのような引き裂きに弱い材料はバリが小さく、天然ゴムのように強いゴムはバリも大きく出る傾向があります。

したがって、ゴムの材質や硬度、製品形状や求められる品質(バリレベル)によって、同じV字喰い切りでも各寸法を調整し、要求品質に応えられる設計が必要になります。

V字喰い切りの特徴

●V字喰い切りはV字型に喰い切りを設計するゴム型構造である。
●V字喰い切りはフラット部の寸法以下にバリ幅を抑えることはできない。
●フラット部の寸法は材質、硬度、要求品質によって微妙な調整が必要となる。

<ブロック喰い切り>


V字喰い切りがV字の形に喰い切りを設計するのに対して、ブロック喰い切りはブロック状に喰い切りを設計する構造です。下図を参照ください。喰い切りがブロック状に設計されているのがわかります。

ブロック喰い切りはV字喰い切りのような刃を立てることがないので、バリ幅を設けず設計上はバリ幅は「ゼロ」となります。これは、刃が立たないために、喰い切りの耐久性を心配する必要がないためです。

したがって、ゴム製品のバリは設計上は「ゼロ」ということになりますが、やはりゴムの弾性に起因し、実際にはバリが発生してしまいますが、高硬度のゴム材であれば概ねバリは綺麗に除去されます。

このようにブロック喰い切りはV字喰い切りと比較して、耐久性が良い点やバリが綺麗に除去できる利点がありますが、全てにおいてブロック喰い切りが付けられる訳ではありません。ブロック喰い切りを付けられる箇所は上図のような形状に限定されるため、付けられない箇所はV字喰い切りをつけることになります。

ブロック喰い切りの特徴

●ブロック喰い切りはブロック形状で喰い切りを設計するゴム型構造である。
●ブロック喰い切りは設計上、バリは「ゼロ」である。
●ブロック喰い切りは製品形状によって付けられない場合もある。

ゴム製品の寸法が安定しない。

コンプレッション成形で成形されるゴム製品は、材料を投入し熱を加えながら圧縮し成形しますが、金型に成形するゴム製品の質量と同じ重量のゴム材料を投入し成形しても、必ず材料不足による不良が発生します。これは、金型が開いている状態で材料を投入するため、型を閉じて投入した材料を圧縮したときに、材料が十分に製品部に流れる前に、製品部以外の外側に先に漏れ出してしまい、本来、必要とされている製品部に回る材料が足りなくなってしまうことが原因です。

したがって、ゴム製品を成形する際には、材料が漏れることを前提とし実際の製品質量よりも多い重量の材料を金型に投入することになります。このようにしてゴム製品を成形し、この漏れた材料部が「バリ」と呼ばれるものになります。「バリ」の除去方法につきましては、上述したように喰い切りをつけることで、綺麗に除去することになります。

ここで、問題になる1つ目が発生したバリの厚みです。

下図を参照ください。金型から漏れ出たゴム材料のバリの厚みはその厚みだけ金型がZ方向(高さ方向)に上がった状態で成形されることになります。金型を上方向に上がった状態で成形されたゴム製品は必ず、バリの厚み分だけZ方向に大きく成形されてしまいます。バリ厚が0.1mmであれば製品高さ寸法は0.1mm高くなります。

これでは、製品寸法として成形された製品は要求寸法品質に応えることが出来ません。したがって、このバリ厚分だけ、ゴム型に逃がす箇所を彫り込んでおく必要があります。この逃がす箇所を「段落ち」と呼びます。

段落ちをゴム金型につけることで、バリが出てもZ方向の寸法が安定したゴム製品を成形することが可能になります。

次は製品全体寸法の安定になります。先に説明したとおりゴム製品の成形では、製品質量よりも多い材料を投入し、熱と圧力をかけて圧縮するコンプレッション成形(圧縮成形)で成形します。この圧縮成形の利点として、材料を圧縮して成形しますので高密度で強い成形品を成形できますが、材料投入重量の変動によってゴム製品の寸法が変動してしまう事があります。
※製品寸法の変動要因としてプレス機能力や成形温度、成形時間などもありますが、これらの要因は一先ず無視して解説いたします。

一概には言えませんが、簡単に言えば投入材料が多ければゴム製品寸法は大きく、投入材料が少なければゴム製品寸法は小さくなります。したがって、ゴム製品の成形において投入材料の重量管理は重要な要素となりますが、実際の量産生産のなかで厳密に重量管理をすればするほど、作業の手間がかかることになりますので、作業性から見た場合、投入材料の重量にはある程度の幅を持たせます。

このある程度の幅を持たせた材料分がバリになることになりますが、バリを吸収する段落ちだけでは投入重量の重量管理幅が少なく、材料管理コストが上がってしまうので、段落ちの外側に無駄な材料が逃げる空間を設けます。この空間を「オーバーフロー」と呼びます。

上型と下型の合わせを決めるガイドピンとガイドブッシュ

ゴム金型の単純な構造として上型と下型の2枚型と呼ばれる構造があります。この上型と下型の合わせ位置の精度がよく出来ていないと、製品の上型部と下型部の境目に位置ずれが生じます。この位置ずれのことを「ぐいち(具いち)」と呼びます。

この位置を正確に合わせるために用いる部品がガイドピンとガイドブッシュになります。片方が凸形状(ガイドピン)のピンを下型にはめ込み、凹形状(ガイドブッシュ)のブッシュを上型にはめ込み、このピンとブッシュを合わせることで、ゴム金型の上型と下型の位置精度を高めます。

しかし、ぐいちの精度には限界があります。ガイドピンもガイドブッシュもゴム金型とは別部品となり、金型加工後に挿入しますが、必ず挿入するためのクリアランスが必要になってきます。このクリアランスを設けるために生じるぐいちや、部品としてガイドピンとガイドブッシュの寸法公差、ゴム金型のピンやブッシュ用に設ける穴の加工精度などにより、微細なぐいちが発生してしまいます。ここが、ゴム金型成形品の限界でもあります。

トランスファー成形の方法

上項まではコンプレッション成形の方法とゴム金型構造について説明しましたが、ここからはトランスファー成形の方法と構造について説明いたします。トランスファー成形は注入成型とも呼ばれる方法で、ゴム金型の上部に、製品部とは別に材料を投入する「ポット」を設け、ポットに投入された材料をコンプレッション成形機を用いて、ゲートを通じて製品部に注入してゴム製品を成形する方法です。

製品のパーティング部は型が閉まった(閉じた)状態で、材料を注入することになりますので、「製品Z方向の寸法精度が安定する」「パーティング部が綺麗に仕上がる」「材料成形が容易」などのメリットが得られることがあるゴム金型構造になります。

ただし、ポット部を設けることになるので「コンプレッション成形型よりも金型費用が高くなる」というデメリットも生じ、着色されたシリコーンゴムの場合はゲート形状によっては「色ムラ」などの不良要因になる可能性もあります。また、ゲート位置を製品上に設けるとゲート跡が残るので、外観部品や機能的にゲート跡がNGとなる場合はゲート位置の調整が必要になります。

最後に・・・

このようにゴム金型構造にはゴム製品を安定して、且つ生産性を高めるための構造が求められ、製品形状や生産数量によって適宜最適な構造が求められます。

なお、ここで紹介したゴム金型構造は基本の「き」をご紹介させていただいたにすぎず、実際にはガス抜きを高めるための構造やパーティングを綺麗にする構造など、様々なノウハウがゴム金型には多数ありますが、最初に書かせていただいたように、これらはゴム成形品の品質と生産性を向上させるために、ゴム成形メーカー各社が日々のトライ&エラーを繰り返しながら努力して培ったノウハウでありますので非公開とさせていただきますことをお詫び申し上げます。

現状の成形品でトラブルなどがあり、ゴム金型構造についてのご質問につきましては、対応可能な範囲においては協力させていただきますので、ご質問等はいつでもお受けいたします。よろしくお願いします。

・・・・ページ内で使用しているデータや写真について・・・・
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