シリコーンゴム成形品によくある不良を把握して未然に防ごう。

今回は商品企画段階で意外と意識がいかないゴム成形品の不良について解説していきます。

ゴム製造工程は完全自動化するのが難しく、作業者が知識と経験をもとに製造を行う職人作業の面を持っています。この職人作業の側面のデメリットとして、あくまでも人が作業することなので、常に完全なる均一作業が難しく、結果として不良品が発生してしまうことがあります。

ゴム製造メーカーはあらゆる手段を用いて、この不良への対策を実施しております。このページでは不良の種類と発生原因、対策について説明します。

図面寸法と現物との相違による「寸法不良」

シリコンゴム商品を製作するにあたり最初に必要となるのが図面ですとお伝えしましたが、完成した商品が図面通りに製作されているかを確認するためにも、図面を用いて各所の寸法を確認していきます。

なお、図面にて設定した寸法通りに製品が出来上がることはあり得ません。これはシリコンゴムに限らず、製造されるゴム製品全てにあてはまりますが、材料ロットの違いや成型/加工条件の違いなどにより、製作された商品の寸法は必ずバラつきが発生します。

10mmと設定した寸法が必ず10mmピッタリで出来上がることはなく、10.1mmなのか9.9mmなのか、もしくは100分台で10.01mmなのか9.99mmなのかの違いはありますが、必ず誤差が発生します。この誤差の許容範囲を寸法公差と言います。公差+(プラス)公差、-(マイナス)公差、そして±(プラスマイナス)公差とあります。

許容範囲(上の図であれば9.90mm~10.10mmまで)内に製造されたゴム製品の寸法が収まれば合格品となりますが、9.89mmや10.11mmだった場合に寸法不良品となり不合格判定となります。

ゴム製品の寸法検査方法

寸法検査器具を用いて規格寸法(図面寸法)と誤差が無いかを確認していきます。寸法検査器具には「ノギス」や「シクネス」などの器具から画像寸法測定機等の高額ですが信頼の高い測定器具まで様々です。

ゴム製品は弾性がありますので寸法を測定するには技術を要します。単純なブロック形状をノギスで測定しても、慣れていない作業者はなかなか正確な寸法を測定することができません。検査作業者の技術向上が必要になるところですがこのような技術が無くても正確に測定できる器具は画像寸法測定機となります。

寸法不良の原因と対策

まずは寸法不良の原因がどこにあるのかを把握するのが重要です。

ゴムのプレス成型において絶対的に形状を決めるのは金型や簡易型になります。この型がしっかりと設計寸法通りに仕上がっていないと、いくら成形で工夫しても対応できません。したがって、初回の寸法不良は型寸法を確認するとこから始まります。型がNGの場合は型の修正や症状によっては再作成となってしまいます。

次に型が正確に出来上がっていても寸法不良は発生します。ゴムは材料を金型に充填し熱を加えながら圧縮して成形しますので、この充填量が必要以上に多く充填されるとゴム製品は大きく成形されます。したがってゴム材料の充填量の確認が必要になります。

また、充填量の以外にも成型機の大きさや種類、熱温度および時間と圧力によっても寸法が微妙に変化しますので注意が必要です。ここで全ての条件をご紹介するのは膨大になりますので割愛します。

シリコンゴム商品に多い「異物不良」

ゴム製品に毛や埃、もしくは汚れなどが混入してしまう不良を異物不良と呼んでおります。成形されたゴム製品がそのまま商品になる場合、見た目が汚く商品価値を著しく低下させてしまう要因となったり、またゴム製品で多い防水防塵パッキンなどのシール面に異物が混入してしまうと、最悪の場合はシール性能が維持できなくなり漏水などの原因にもなりかねません。

このように異物不良はゴム製品の見た目だけではなく、機能性においてもトラブルとなる要因になりかねない不良ですので、成形メーカーとして異物対策は重要な不良対策となります。

異物不良の検査方法

一般的には目視検査にて対応します。目視検査とは検査員が実際にゴム製品を目視で確認し異物の有無を確認する検査方法であり、広く一般的に実施されている検査方法となります。なお、目視検査は非常に単純な作業ではありますが、熟練された作業者と慣れていない作業者では異物の発見レベルに大きな差が差が生まれてしまいます。弊社では「検査の目になれる」などと言いますが、検査目になるまでには、時間と経験が必要になってきます。

この目視検査ですが、要求品質が高い場合は単純な目視検査だけでは、発見できない場合もあり、拡大鏡、光学顕微鏡などを用いて検査する場合もあります。

なお、寸法不良において寸法公差と呼ばれる許容範囲について説明しましたが、異物不良に関しても同様に許容範囲を設定いたします。全ての微細な異物もNGとしてしまうと、成形品の歩留まりが極端に悪くなり、結果として製品価格が高い製品になりかねません。したがって、許容できる異物のサイズを先にと決めさせて頂き、異物付着の際は許容範囲を超えているかいないかを判断することになります。もちろん、超えていなければ良品判定となります。

この許容範囲を決めるのに役立つのが「きょう雑物測定図表」となります。この測定図表に基づいて検査していきます。

異物不良の原因と対策

異物は一般環境下では空中にいくらでも浮遊しております。まを、作業服や作業時に用いる軍手やウェスなどからも発塵しますので、完全に抑えることが難しいです。単純に考えれば異物が浮遊していない環境下で成型すれば、ゴム製品に異物が混入することはありませんが異物の無い環境を整備するのは難しいのが現状です。クリーンルーム環境を整えたとしても異物がゼロではありませんので。

先ずは当たり前ですが異物が入らない環境を整えます。外部と成型室を完全に別にし、成型室には可能を限り発塵する物を持ち込まない。また、作業者は必ず作業帽子を着用し髪の毛や髪の毛に付着している埃等を成型室に落とさないように心がけます。また、成型室は常に綺麗な環境を整え不要をものは置かず、日々簡単に気軽に気付いた時に清掃できるよう整理整頓の行き届いた環境にしておくのも重要です。

そして、一番大事をのは異物不良を無くすという、個々の作業者の気持ちが重要です。ここが無いといくら綺麗な環境を整えても異物不良は止まりません

型と型のつなぎ目に起こる「ぐいち不良」

「ぐいち」と言う言葉はご存知でしょうか。ほとんど成型メーカーでしか使用されない言葉ではないかと思い、少し調べてみました。語源は博打なのでしょうか・・・、ちょっと調査が足りないのであまり詳しく書きませんが、成型メーカーで使用する型の合わせ目の位置が上型と下型で一致していない状態、すなわちズレが生じている状態を「ぐいち」と呼びます。

上下の型の位置にズレが生じているので、この型で成型されたゴム製品は必然的に上下でズレのある製品になってしまいます。寸法や異物と同じく、絶対にズレの無い型を製作するのは不可能です。ここでも許容差が必要になりますが、一般的にぐいちの許容差を改めて設ける事は少ないです。したがって、成型メーカーが確認し慣習としてOKとしているラインにて合格としています。

この「ぐいち」が発生する最大の要因は型の合わせがズレていることによります。型の合わせはガイドピンを用いますが、ガイドピンのズレ、型の加工時のズレなどが根本原因になることが多いです。

ぐいち不良の原因と対策

対策としては型の修正になりますが、成型メーカーにて型を製作していることは少ないため、ゴム金型メーカーに相談することになります。型が完成した際には型検と呼ばれる検査を実施しますが「ぐいち」が出ていないか確認をしっかりと行います。

また、型が精度よく出来上がっていたとしても成型時の材料充填量や圧力によりぐいち不良が発生する場合もあります。これは、材料が多かったり、圧力不足により上型と下型がしっかりと合わさっていないために発生します。この場合は成形条件の見直しが必要になってきます。

様々な要因で発生する「切れ」や「欠け不良」

切れ不良とはそのままですが製品に切れが発生している状態を指します。切れが発生している製品はそこがキッカケとなり切れがより深くなりますので、少しでも切れが見受けられる場合は不良判定するのが無難です。なお、製品用途的に何ら問題なく外観を損なう恐れもない場合においては、品質合意のうえ切れ不良を良品判定する場合もをります。

切れ不良の検査方法

裸眼による目視検査が一般的ですが、異物不良は製品をそのまま見ているだけで不良を発見できますが、切れ不良の場合は製品をそのまま見ていても発見する事が困難な場合があります。これは切れている箇所が広がっていれば目現で簡単に発見できますが、閉じている場合は見た目は問題なく見えてしまうからです。したがって檢査では製品を引っ張ってみたり、曲げてみたりしながら切れが無いか確認します。

切れ不良の原因と対策

切れ不良の発生の多くは成型段階の脱型時(金型から製品を取り出すとき)になります。金型を手作業で開ける場合に一度に開けられるず、少し空いては閉じて、また少し空いては閉じてを繰り返してしまうと金型の喰い切りと呼ばれる箇所に製品を挟んでしまい製品が切れてしまいます。

また、アンダー箇所のある製品や脱型がしづらい製品を無理に手で引っ張り脱型しようとするとゴム製品に負荷がかかり切れが発生してしまいます。仕上工程においてバリ除去のために仕上ハサミやニッパを用いる場合に誤って製品を切り込んでしまい切れ不良を発生させてしまう場合もあります。

したがって先ずは製品が切れにくい形状設計が必要になります。(すでに金型を用いて生産している場合は難しいですが。。。)特に谷部のエッジ箇所、アンダー部のエッジ箇所等は切れ多発箇所となりますので、製品形状の設計段階で面取り等を入れることが望ましいです。

次に必要なのは金型構造の検討です。喰い切りで製品を傷つけてしまう場合には成型機に型を取付てしまう方法や上下型の間にバネを挿入し一度空いたら型が閉じないような構造にする事で対処できます。

脱型時の無理抜きによる切れの場合は、離型剤の塗布方法の変更や脱型時エアーのかけ方を考慮する方法、製品を無理抜きする方向の変更などで対処できますが、これらは人の作業によるところが大きいため、作業者の技術の向上が求められます。

最後に仕上ミスによる切れの発生ですが、どうしてもハサミやニッパを用いらなければならない場合は、先と同じになりますが作業者の技術向上が必須です。ただし、その前にそもそもハサミやニッパを入れないように金型構造を検討するのが重要です。

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